愛を教えて
万里子の左肩と首の付け根にある赤い刻印。

それは、間違いなくキスマークだ。


「こんなことまで、太一郎にされたのか? もっと殴ってやればよかった!」


突然、愛撫をやめ、大声を上げる卓巳に万里子は驚きの声を上げる。


「え? こんなって」

「首の横に充血がある。これは唇で吸われた痕跡だろう?」


その言葉に、万里子は頬を赤らめながら、意外な犯人を教えてくれた。


「昼間はハイネックのセーターを着ていました。だから、そんなところに太一郎さんが唇なんて……あのとき、です。卓巳さんが、ソファの上で。あのとき、強く吸われたから……まだ消えなくて」


今度は卓巳が赤面する番だ。

太一郎を殴れた義理じゃない。耳まで赤く染め、卓巳は必死で謝った。


「ご、ごめん。痛かっただろう? こんなに強く吸っていたとは思わなかった。これからは気をつけるから」

「いえ……そんな。あんな場所で無理にされるのは嫌ですけど。でも、痕が残るのは嫌じゃないです。あなたの妻になれた証のような気がして」


万里子の声が途切れ、ベッドの中に再び静寂が訪れる。


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