愛を教えて
「この、別項の二なんて誰が証明するんですか? あなたに何をされても、すべて私から求めたと言われたら……。あなたのペナルティを記載した条項なんてまるで意味がなくなるじゃありませんか!?」



次の瞬間、万里子の背後から口笛が聞こえた。秘書の宗である。


「なかなかどうして、ひと筋縄ではいきそうもない、賢いお嬢さんだ」


いかにも万里子を小馬鹿にした口調であった。

彼女が宗に向かって反論しようとしたとき、卓巳が口を開いた。


「言ったはずだ、僕が君に何をすると言うんだ。十七、八で男と寝て、子供を堕ろすような女に? 夫の義務だと言われても抱く気はない。だからと言って、欲求不満で他の男に走られても困る。理由はそれだけだ。すべて君の不徳だろう。違うのか?」


ここまで、中絶の件を持ち出されるたび、何も言い返せなかった。

だが、どれほど恥ずべき罪であったとしても、卓巳は万里子を脅迫しているのだ。そんな相手に、これ以上口汚く罵られる覚えはない。


「それは、私があなたを誘惑するということですか?」


万里子は卓巳を睨み言い返した。


「僕は君をそういう女だと思っている。汚れたふしだらな女だ。不満かな?」

「では、あなたは私に触れるのも嫌だと言いながら、私の誘惑に負けるとおっしゃるんですね」

「馬鹿を言うなっ! 僕が君の誘惑に落ちる訳がないだろう!?」


卓巳は声を荒げた。


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