愛を教えて
これ以上、万里子を怖がらせたくはない。

キャミソールで胸を覆い、肩紐を元に戻した。そして、彼が外したパジャマのボタンを、今度は下から順にひとつひとつ留めていく。

隠されていく素肌に、後ろ髪を引かれる思いだ。


(落ちつけ、焦るんじゃない。万里子は僕の妻なんだ)


深呼吸をひとつすると卓巳はわざと気取った声を出した。


「奥様、隣に寝て腕枕をする名誉はいただけますか?」


そのお茶目な口調に、万里子は吹き出しながら答える。


「ええ、与えましょう」


ふたりは顔を見合わせて笑った。と、そのまま、ごく自然に唇を重ね――。

軽くキスし合っては少し離れ、また唇を寄せ合う。

まるで高校生同士のように、ふたりは少しずつ、寄り添う温もりを知るのだった。


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