愛を教えて
それは少し前までの、熱に浮かされたような声ではない。わずかだが、卓巳の緊張が万里子にも伝わる。気のせいか、室温まで下がったようだ。

万里子は少し不安になり、卓巳のパジャマにしがみついて答えた。


「ええ、なんでしょうか?」

「実は……僕は君に嘘をついていた」

「え?」

「すまない。本当にすまない。だが、どうしても話せなかったんだ」


そこまで言うと、卓巳の口は再び閉じてしまった。


沈黙したまま時間だけが過ぎる。

そのせいだろうか、時計の秒針の刻む音が異様に大きく聞こえた。


「たくみ、さん?」


卓巳の眉間にはシワが寄り、これまで見たこともない深刻な表情だ。

それは、戸惑いながらも快楽を伴うセックスを受け入れようとしている万里子を更なる不安に追いやった。


「あ、ああ、悪い。いざとなると、なかなか……」

「正直におっしゃってください。この間のプロポーズを撤回されるなら、私は」

「違う。そうじゃない! 何を言ってるんだ、万里子。君は最高だ。女神のような美しさだ。いや、それ以上だよ。僕には勿体ないくらいで……本当に、僕のような男には」

「卓巳さん……」


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