愛を教えて
そのまま、また黙り込んでしまう。
万里子はそんな卓巳の様子に、初めて藤原邸を訪れたときのことを思い出していた。
皐月が卓巳の病状に関する報告書を出したとき、彼の体は小刻みに震えていた。酷く苦しそうな表情で、万里子の手をしっかりと握り……その手は驚くほど汗ばんでいた。
「卓巳さん。私はあなたからどんな告白を聞いても、気持ちは変わりません。たとえあなたが犯罪者でも、何万光年離れた惑星《ほし》から来たって言われても、です」
それはつい先日、万里子に改めてプロポーズしたとき、卓巳の言った台詞と同じ内容だった。
万里子は卓巳の左手に、自分の右手を絡める。包帯が少し邪魔で、その代わりに左手を添えた。宝物を抱えるように、彼の左手を両手で挟み込む。
そして、最上級の笑顔を見せながら、万里子はプロポーズの返事をした。
「あなたが、私のことを“愛してる”って泣いて頼むから、一生おそばにいることにしました。だから、もしあなたが正義の味方で、役目を終えて惑星《ほし》帰られるときは、私も連れて行ってくださいね」
万里子につられ、卓巳の頬も緩む。
緊張がほぐれたようで、ようやく卓巳は重い口を開き始めた。
「僕の母の話はしたよね? 母は僕の前でも、お構いなしに男を引っ張り込んで、セックス三昧だった、と。今なら多少は母の寂しさもわからないではない。でも、中学生の少年には無理な話だ」
そこまで話し、卓巳は静かに身を起こした。万里子も一緒に起き上がる。
そして、卓巳が語ったことは、万里子にとって衝撃の内容だった。
万里子はそんな卓巳の様子に、初めて藤原邸を訪れたときのことを思い出していた。
皐月が卓巳の病状に関する報告書を出したとき、彼の体は小刻みに震えていた。酷く苦しそうな表情で、万里子の手をしっかりと握り……その手は驚くほど汗ばんでいた。
「卓巳さん。私はあなたからどんな告白を聞いても、気持ちは変わりません。たとえあなたが犯罪者でも、何万光年離れた惑星《ほし》から来たって言われても、です」
それはつい先日、万里子に改めてプロポーズしたとき、卓巳の言った台詞と同じ内容だった。
万里子は卓巳の左手に、自分の右手を絡める。包帯が少し邪魔で、その代わりに左手を添えた。宝物を抱えるように、彼の左手を両手で挟み込む。
そして、最上級の笑顔を見せながら、万里子はプロポーズの返事をした。
「あなたが、私のことを“愛してる”って泣いて頼むから、一生おそばにいることにしました。だから、もしあなたが正義の味方で、役目を終えて惑星《ほし》帰られるときは、私も連れて行ってくださいね」
万里子につられ、卓巳の頬も緩む。
緊張がほぐれたようで、ようやく卓巳は重い口を開き始めた。
「僕の母の話はしたよね? 母は僕の前でも、お構いなしに男を引っ張り込んで、セックス三昧だった、と。今なら多少は母の寂しさもわからないではない。でも、中学生の少年には無理な話だ」
そこまで話し、卓巳は静かに身を起こした。万里子も一緒に起き上がる。
そして、卓巳が語ったことは、万里子にとって衝撃の内容だった。