愛を教えて
「僕が中学三年のときだ。店から酔って帰った母は、僕に関係を迫った」


万里子は口元を押さえ、言葉もない。

卓巳は中空を睨んだまま、淡々と話し続ける。


「母は……僕のものを咥えて勃たせようとした。僕は自分を抑えるのに必死だった。勃つなってね。絶対に母は抱きたくないと、夜中に家から飛び出した。でも、それから何度か、義父が仕事で居ない夜に」


卓巳は自嘲気味に薄笑いを浮かべ、万里子を見た。


「どんなことをしてもダメだとわかると、僕の父も時々ダメだった、親子揃って……と。僕を見て、母は嘲笑った」


それは、聞くだけで切なくなる告白だった。
万里子は止めようと思ったが、卓巳自身が言葉にすることを望んでいる。

“話せない”万里子には、“話したい”卓巳の思いが痛いほどわかった。

妻であるなら、卓巳を愛しているなら、聞かなければならない。

万里子は、卓巳のどんな告白も受け止める覚悟を決める。


「十八のときに母が亡くなって、僕はようやく解放された。悲しさより、罪を犯さずに済んだことにホッとしたよ。そのあとかな……アダルトビデオや、そういった雑誌を見ても全く反応しない自分に不安になったのは」


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