愛を教えて
卓巳は以前『失恋のショックで女性と関係が持てなくなった時期があった』そう言っていた。
それが、卓巳の言う“嘘”だろうか?
万里子は尋ねたかったが、口は挟まず、卓巳の言葉を待った。
「医者の診断は『心因性の性機能障害』。母のことで、性的事柄すべてに嫌悪感を抱いている、と言われた。治療を勧められたけど、僕は断った。自分はそんなに弱い人間ではない。母はもう亡くなったし、何年も前に割り切ったことだ。それを証明するために、僕は女性を口説いてベッドに連れ込んだ」
「そんな……卓巳さんに限って」
万里子が声を上げたのは卓巳の病名を聞いたときではなく、女性とベッドを共にした、という告白。
しかし、続く言葉に、万里子はこっそり安堵のため息を漏らした。
「結果は……見事、玉砕。下半身はピクリともせず、服すら脱がすことができなかった。僕は笑い者になり……逃げたんだ。二度と女には近づかない。そう決めていた僕に、静香は迫って来た」
「え? 静香さんが、ですか?」
あずさのことは聞いていた万里子だが、静香のことは初耳だ。
「静香の裸を見たとき、僕は吐いた。美しいとも触れてみたいとも思わなかった。無理に母の胸を触らされたことを思い出しただけだ」
卓巳は両手で顔を覆った。
それが、卓巳の言う“嘘”だろうか?
万里子は尋ねたかったが、口は挟まず、卓巳の言葉を待った。
「医者の診断は『心因性の性機能障害』。母のことで、性的事柄すべてに嫌悪感を抱いている、と言われた。治療を勧められたけど、僕は断った。自分はそんなに弱い人間ではない。母はもう亡くなったし、何年も前に割り切ったことだ。それを証明するために、僕は女性を口説いてベッドに連れ込んだ」
「そんな……卓巳さんに限って」
万里子が声を上げたのは卓巳の病名を聞いたときではなく、女性とベッドを共にした、という告白。
しかし、続く言葉に、万里子はこっそり安堵のため息を漏らした。
「結果は……見事、玉砕。下半身はピクリともせず、服すら脱がすことができなかった。僕は笑い者になり……逃げたんだ。二度と女には近づかない。そう決めていた僕に、静香は迫って来た」
「え? 静香さんが、ですか?」
あずさのことは聞いていた万里子だが、静香のことは初耳だ。
「静香の裸を見たとき、僕は吐いた。美しいとも触れてみたいとも思わなかった。無理に母の胸を触らされたことを思い出しただけだ」
卓巳は両手で顔を覆った。