愛を教えて
恥ずかしそうに卓巳の胸に顔を埋め、囁いた万里子の声が耳から離れない。


『卓巳さんにならすべてを見て欲しい。いつかきっと……そう信じていてもいいですか?』


卓巳に異論などあるはずがない。
更に万里子は言った。


『あなたに会えないくらいなら、死んだほうがマシだって思ったの。キスも、それ以上も、他の女の人には絶対にしないで。ベッドの上で夢中になる顔は、私にだけ見せて。私はもう、卓巳さんに捨てられたら生きていけない』


あれを誘惑だと思わない男がこの世にいるんだろうか?


(ああ……そう言えば、三ヶ月前の僕じゃないか)


他の女に言われたら、心にもないことを言うな、と一蹴していただろう。
だが、万里子なら話は別だ。


『ダメだ、万里子。そんなふうに言ったら、またパジャマを脱がせたくなる。本音を言えば、さっきからしたくて堪らないんだ。僕の中に、こんな欲望があったなんて……妻を求めるのは罪じゃないと言ってくれ! ああ、もうダメだ、我慢できない!』


卓巳は万里子の上に覆い被さり……。


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