愛を教えて
「とにかく、シャワーを浴びて、頭を冷やして来ないと、これじゃ仕事にならないな」

「ご、ごめんなさい」

「どうして君が謝るんだい?」


卓巳はベッドから下り、窓際まで歩き寄り、一気に遮光カーテンを引いた。

バルコニーに面した大きなフランス窓から、明るい陽射しが寝室に注ぎ込む。あっという間に朝の光は室内をいっぱいにした。

窓辺に立つ卓巳が、万里子を振り返る。そして、夕べの余韻を漂わせたまま、親密な笑顔を見せたのだ。

万里子はうっとりと見惚れそうになり、慌てて口を開いた。


「あ、うっかり寝過ごしてしまって……」

「お互い様だ。それより、頬は大丈夫か? どこか痛いところは? 君を労るつもりでベッドを分けたのに、もっと色々してしまって……止まらなかったんだ。本当にすまない」


卓巳は再び万里子のそばまで来て、ベッドに腰かけた。そして、手を伸ばして頬に触れる。それだけで、万里子は胸の高鳴りを覚えた。


愛し合う行為は、卓巳だけでなく、万里子をも変えていく。

卓巳の、まるで宝物を扱うかのような、繊細な指遣いと唇は、万里子の身体にも火を点けた。


「そうだったんですね。私はてっきり……」


卓巳と初めて新婚らしい朝を迎えて以降、ずっとベッドは一緒だった。なのに、昨夜は寝室に入った途端、別にしようと言われ……万里子はそれがショックだった。


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