愛を教えて

(7)変わり始めた朝

「万里子様、いったいどうされたんですか?」


卓巳より先に一階に下りて行くと、エントランスホールに宗が立っていた。

彼女の顔を見るなり、声を上げる。


すぐに冷やしたので思ったより腫れてはいないが、口元の絆創膏は嫌でも目立つ。


「階段から……落ちてしまって。でも、見た目ほど酷くはないんです。卓巳さんもすぐに下りて来られますから、お待たせしてごめんなさい」


誰がどう見ても『階段から落ちた傷』でないのは明らかだ。だが、万里子はそんな言い訳をして微笑んだ。


昨夜から今朝にかけての卓巳は、まるでブレーキの壊れた車のようだ。

シャワーを浴びると言いながら、キスした途端、万里子をベッドに押し倒そうとした。

宗からの電話がなければ、万里子の胸にキスマークの数が増えていただろう。



「万里子、今日は病院に行って検査を受けてくるんだ。それから、肩と肘にも痣ができていた。ちゃんと診てもらうように」


万里子より少し遅れて、卓巳はオープン階段に姿を現した。


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