愛を教えて
それが、今日の卓巳は様子が違う。


自分から万里子の名前を出しておきながら、再び資料を開き、必死に目を通すふりをしている。

だが、ページは行ったり来たりで、あれでは頭に入るはずがない。


(おいおい、十代のガキじゃあるまいし)


からかうつもりはなかったが、珍しい卓巳の様子についつい口が軽くなり……。


「昨夜は、惚けるほどよかったんですか?」

「そりゃあもう最高に……だ、だから聞くなと言ってる!」


なんと卓巳は怒鳴ると同時に横を向き、耳まで赤くして額の汗を拭い始めた。


(これが……あの藤原社長か? いったい、何がどうなってるんだ?)


宗は一瞬呆気にとられ、直後、大爆笑したい衝動に駆られる。

だが、相手は社長だ。かなりご機嫌とはいえ、さすがにまずいと思い、必死で苦笑に押し止めた。


「いえ、それはさぞかし、新婚旅行が楽しみですね」


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