愛を教えて
結婚当初は周囲に気を揉ませたが、ようやく、夫婦仲も上手くいき始めたようで皐月もひと安心だ。


このところ、皐月の体調はあまり思わしくない。

気温が下がったこともあるが、太一郎の件も原因のひとつだろう。

皐月は太一郎を呼び付けて叱責したい、と言ったが……『興奮するのはよくない』と医者から止められたのだ。結局、万里子の口添えで、皐月は心ならずも太一郎を不問にした。



しかし、そんな新婚夫婦の様子に面白くないのが和子だった。


「でも、うちには高校生の男の子もおりますのよ。いくら新婚さんとはいえ、その辺りは自重していただきませんと」

「す、すみません」


和子に言われ、万里子はすぐに謝る。


「そんなふうだから、太一郎さんも間違いを起こしそうになるのよ。ねぇ、お姉様」


この席にいないのは敦と太一郎のふたりである。

太一郎はいつものことだが、敦は卓巳から何か言われるのが怖いらしく逃げ回っていた。

尚子にしても、これまでのような嫌味は面と向かって言えなくなった。今も、和子の言葉にも小さくうなずくくらいだ。

和子ひとりなら、積極的に卓巳をいびることはしない。現にこれ以上、文句を言うこともなく。


近ごろの食卓は、卓巳にとって純粋に食事を楽しめる場となった。


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