愛を教えて
万里子は二階のバルコニーで脚立を使い、窓を拭いている。

横には雪音もいて、何が楽しいのかふたりとも満面の笑顔だ。



「気に食わない、あの女」


万里子と雪音を見上げていたのは、メイドの永瀬あずさだった。

手を貸してやったはずが、太一郎には感謝されるどころか、罵詈雑言を浴びせられた。
それも、『八十のババアを抱いたほうがマシ』とはあまりの言いようだ。

ほんの数日前まで、太一郎もあずさを抱いて楽しんでいたはずなのに。

それが今では万里子の飼い犬同然である。
彼女に気に入られようと、尻尾を振って擦り寄っているのは見え見えだ。

一方で、あずさに向かっては牙を剥き始めたのだから、怒りも増すというもの。


あずさは今日の担当場所であるガーデンルームの床をモップで掃除しながら、コッソリとほくそ笑む。


「ふふん。笑っていられるのも今のうちよ」


そう、例の件を報告すれば……そして最も効果的な作戦は……あずさは更に卑劣な罠を計画していた。


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