愛を教えて
万里子にとって卓巳と過ごす、初めてのクリスマス・イブがやってきた。

また手作りケーキで、と言いたいところだが、その日、卓巳は札幌に出張となってしまう。


ロンドンで行われるニューイヤーパーティが会社主催の公式レセプションを兼ねているため、二十八日には東京を出発予定だ。

それに向けて最終的なスケジュール調整をしており、今の卓巳はとにかく多忙だった。


『八時まで会議の予定が入ってる。十時前の最終便に間に合えばいいんだが』


今朝、家を出るときに卓巳が言った言葉だ。
せっかくのイブを一緒に過ごせないのは残念だが、それもこれもハネムーンのためである。


『無理しないでください。明日の夜、一緒に過ごしましょう』


万里子はそう言って卓巳を送り出した。


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