愛を教えて
怪文書に掲載された写真は、ほとんどが合成だという。素人にもわかる粗末なもの、と浮島や千代子が声を揃えて言った。
問題は、太一郎の部屋を万里子がひとりで訪れていた、という使用人たちの証言だ。
その理由を皐月は確認しておきたかった。
それで太一郎が変わったのなら尚更だろう。
太一郎が性欲のみで万里子を襲ったのなら、卓巳の逆鱗に触れたことを知り、二度と繰り返すことはあるまい。
だがもし、従兄の妻に横恋慕したのであれば……。
あの事件のあと、太一郎が無理に万里子と関係したのだとしたら?
いくら夫婦仲がよくても、卓巳と万里子の間に深い交わりはないだろう。診断書には卓巳が回復する可能性は、ほぼゼロと書かれてあった。
だが太一郎は、女性の扱いには慣れている。閨事に長けた太一郎の手にかかれば、万里子もどうなるか。
卓巳には挽回の手立てもなく、ましてや妊娠でもすれば……。
万里子は太一郎を選ぶかもしれない。
そんなことになれば卓巳の心は壊れてしまう。
万里子の気性は穏やかな春の陽射しに似て、卓巳の心を見事に溶かした。
しかし、その寛容さが、まさか太一郎の激情まで包み込んでしまうとは。
皐月はそれが取り越し苦労に過ぎないことを、ただただ願うばかりだった。
問題は、太一郎の部屋を万里子がひとりで訪れていた、という使用人たちの証言だ。
その理由を皐月は確認しておきたかった。
それで太一郎が変わったのなら尚更だろう。
太一郎が性欲のみで万里子を襲ったのなら、卓巳の逆鱗に触れたことを知り、二度と繰り返すことはあるまい。
だがもし、従兄の妻に横恋慕したのであれば……。
あの事件のあと、太一郎が無理に万里子と関係したのだとしたら?
いくら夫婦仲がよくても、卓巳と万里子の間に深い交わりはないだろう。診断書には卓巳が回復する可能性は、ほぼゼロと書かれてあった。
だが太一郎は、女性の扱いには慣れている。閨事に長けた太一郎の手にかかれば、万里子もどうなるか。
卓巳には挽回の手立てもなく、ましてや妊娠でもすれば……。
万里子は太一郎を選ぶかもしれない。
そんなことになれば卓巳の心は壊れてしまう。
万里子の気性は穏やかな春の陽射しに似て、卓巳の心を見事に溶かした。
しかし、その寛容さが、まさか太一郎の激情まで包み込んでしまうとは。
皐月はそれが取り越し苦労に過ぎないことを、ただただ願うばかりだった。