愛を教えて

(3)罠

冬至を過ぎたばかりのこの時期、夕方四時半を回れば周囲は薄暗くなる。

そして、だいぶ暗くなった五時ごろ、万里子は帰宅した。


普段の買い物は藤原グループ系列のデパートに行くことが多い。
だがそのときは、店長をはじめとして幹部たちが勢揃いし、最敬礼で出迎えてくれる。

だが今日は万里子ひとりだ。
卓巳が一緒だったり、皐月の用事だったりするときはともかく、ひとりだとどうも居心地が悪い。

ついつい、結婚前に通い慣れた大学近くのショッピングモールに足が向いてしまった。

ところが今度は大学の友人とバッタリ顔を合わすことになり……。

結局、久しぶりに何気ない話題で盛り上がり、楽しい時間を過ごして来たのだった。


「ただいま帰りました!」


さすがに最近は電車に乗ることが少なくなった。
今日は、行きは藤原家の車で、帰りはタクシーを使う。

理由はひとつ、携帯電話を忘れたせいだ。

運転手に連絡が取れなかったのだが、そのことが万里子に対する疑惑を深める結果になるとは思いもせず。


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