愛を教えて
『女性が怒るのは信頼しているからです』――いつか宗が卓巳に教えたことだ。


万里子は怒っている。
卓巳は一歩引いて、万里子の怒りが治まってから、太一郎に話した理由を聞けばよかった。

それが、このときの卓巳にはできず、万里子の両腕を掴んで罵声を浴びせてしまう。


「昼はどうだ? 使用人の目を盗めば簡単なことだ! 奴となら本物のセックスができる。僕には話せないことも奴になら話せた。それは……僕の前では決して脱がない最後の一枚を、奴の前で脱いだからだろう!?」


卓巳の度を超した怒りに、万里子は臆して我に返った。


「いや……やめて、怒鳴らないで。腕を……離して」


身をよじり卓巳の拘束から、必死で逃れようとする。

これまでなら、卓巳もここで我に返ってきた。

だが、幾夜も万里子を抱いて過ごし、彼自身が男の性に目覚めてしまっている。太一郎とベッドで絡む姿が頭に浮かんだ。そして卓巳を見上げる万里子の瞳に堪らなく欲情する。


「来い。お前の身体に聞いてやる!」


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