愛を教えて
卓巳は万里子を抱き上げ、大股で部屋を横切る。

そのまま二重の扉を抜けて寝室に入ると、万里子をベッドに下ろした。


「た、たくみ、さん?」


本気であるはずがない。

万里子はそう思っていた。
卓巳が本気で万里子の身体を傷つけるだなんて、絶対にあり得ない。

卓巳は愛してくれている。

たとえ万里子が人を殺していたとしても、それでも愛すると言ってくれた。

だが、今日の卓巳は何かがおかしい。 


卓巳は寝室の内扉に鍵をかけた。
その足で窓際に行きカーテンを閉める。
この暗さだから、どちらにせよ同じだ、と万里子は思ったが……その瞬間、室内は煌々とした灯りに照らされた。


「待って! 卓巳さん、これじゃ話し合いなんてできません!」


そんな万里子の言葉を無視し、卓巳は無言でスーツを脱いだ。
タブカラーのドレスシャツを無造作に脱ぎ、あっという間に半裸になる。


「やめてください。私はとてもそんな気にはなれませんから。――失礼します」


万里子は起き上がり、ベッドから下りると足早に扉に向かう。


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