愛を教えて
そのときだ、卓巳は背後から万里子を羽交い締めにした。


「卓巳さんっ!」


その腕にいつもの優しさはなかった。

卓巳の指は、背後から万里子のブラウスに手をかけ、力任せに引き裂いた。
存在を無視されたボタンが弾け飛び、床に転がる。


「きゃっ!」


スカートも強引に脱がされ、卓巳は再び万里子をベッドに押し倒した。


「卓巳さん……お願いだから、やめて。何か言って、卓巳さん」

「違うだろう? 太一郎に見せた顔を僕にも見せるんだ。亭主は役立たずで自分を癒やしてくれない。全部忘れさせてくれとでも頼んだのか? 言えよ、正直に言ってみろ。僕じゃ満足できないと言え!」


万里子は怯えていた。

卓巳が怖い、何もかもがいつもと違う。


ところが、恐怖に口を閉ざした万里子を、言い訳のできない後ろめたさだと卓巳は誤解した。


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