愛を教えて
誤解は卓巳の目を眩ませ……彼に罪を犯させる。


万里子から、身を隠すすべての布地を奪い取ってしまった。


「僕は夫なんだ。夫が妻の身体に触れてどこが悪い!」


万里子の裸体は、眩しい照明の下に晒された。

肌に刺さる光は屈辱以外の何ものでもない。

更に卓巳は万里子の許しも得ず、彼女が隠し続けた場所に触れてしまう。

ようやく塞がりかけた傷口を抉られる悲しみに、万里子は小さく悲鳴を上げた。


「僕との馬鹿げたセックスまで、奴に話したのかっ? 無様な亭主の姿を太一郎と一緒に笑っていたのか? さあ、言ってみろっ!」


卓巳にとっても初めて触れる場所だ。

経験がないどころか知識もない。できる限りセックスを思わせる情報を人生から排除してきたせいだ。

万里子と抱き合うようになっても、余計な期待は抱かぬように、と核心部分は避け続けてきた。

そんな卓巳である。加減などわかるはずがない。


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