愛を教えて
一方、邸を飛び出した卓巳だが、行く当てもなく、ただ車を走らせていた。


『太一郎さんに抱かれました』

『どうせ本当にはできないくせに』


万里子の声が頭の中で回り続ける。


万里子のすべてが自分のものだと信じていた。

彼女は特別で、他のどんな女とも違う。


愛していると言って欲しかった。泣いて縋って欲しかったのだ。ひと言謝ってくれたなら、決してあんな真似はしなかった。


卓巳は、万里子の心の変化に気づいてなかったのである。


< 515 / 927 >

この作品をシェア

pagetop