愛を教えて
「頼む。私が愚かだった。免停でも取り消しでも構わない。処分は甘んじて受ける。早くここから出して欲しい」


卓巳の姿を見た瞬間、宗は唖然とした。

シャツのボタンをかけ違えていて、裾はズボンからはみ出ている。それに、ノーネクタイの卓巳を見るのは極めて珍しい。


「まあ、酒気帯びでなくて幸いです。事故も起こしてませんから、取り消しにもならないでしょう。でも、罰金刑は覚悟してくださいよ」

「一千万でも二千万でも払う」

「警察はボッタクリバーじゃありませんよ。公務執行妨害の件は、反省文を出せば許してもらえるそうです」

「わかった。反省ならいくらでもする。さっきの警官に直接詫びてもいい。早く出してくれ!」


留置場程度で怖じ気づく卓巳ではない。

だが、一分一秒でも早く戻り、土下座をしてでも万里子に詫びなければ、取り返しのつかないことになる。


そんな卓巳の願いは届かず。

事務手続きでふたりは朝まで待たされ、宗の車で警察署を出たのは八時を回っていた。


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