愛を教えて
万里子が落ちつくのを見計らい、皐月は尋ねた。
「ひとつ聞いていいかしら? なぜ、あなたは太一郎さんにそのことを話したのです?」
「もうご自分は手遅れだ、と。そんなふうにおっしゃる太一郎さんに知って欲しかったんです。犯した罪が消えないからといって、これ以上、重ねるべきではない、と」
皐月はそんな万里子の真意を、もう一歩踏み込んで聞いてみたくなる。
「卓巳さんはね、心に深い傷を負っておられます。そのせいで随分苦しんで来られました。わたくしが夫に逆らえなかったから。でも、何不自由なく育った太一郎さんのことまで救う必要があるのかしら?」
皐月は、卓巳が万里子にすべてを話したことは知らない。そのため、控えめな言葉を選ぶ。
そして皐月の太一郎に対する思いは……。
息子と同じように、この家から追い出し苦労させてやりたい。それぐらいしなければ、息子も浮かばれない。
皐月の言葉の端々から、苦い思いが滲み出ていた。
「ひとつ聞いていいかしら? なぜ、あなたは太一郎さんにそのことを話したのです?」
「もうご自分は手遅れだ、と。そんなふうにおっしゃる太一郎さんに知って欲しかったんです。犯した罪が消えないからといって、これ以上、重ねるべきではない、と」
皐月はそんな万里子の真意を、もう一歩踏み込んで聞いてみたくなる。
「卓巳さんはね、心に深い傷を負っておられます。そのせいで随分苦しんで来られました。わたくしが夫に逆らえなかったから。でも、何不自由なく育った太一郎さんのことまで救う必要があるのかしら?」
皐月は、卓巳が万里子にすべてを話したことは知らない。そのため、控えめな言葉を選ぶ。
そして皐月の太一郎に対する思いは……。
息子と同じように、この家から追い出し苦労させてやりたい。それぐらいしなければ、息子も浮かばれない。
皐月の言葉の端々から、苦い思いが滲み出ていた。