愛を教えて
しばらくすると、卓巳を心配して皐月までもが二階に上がってきた。


「卓巳さん、こんなことをしている場合ですか? 早く万里子さんを追いなさい。今ならまだ間に合います。万里子さんは、あなたを愛していると言ってました。……聞こえないのですか、卓巳さん!」


そんな皐月の言葉にも、卓巳は首を左右に振ったまま立ち上がろうとしない。


「何かの発作かも……?」


雪音の呟きに今度は主治医の安西医師が呼ばれた。

しかし、卓巳は安西に脈すら取らせず、全員を部屋から追い出した。


安西は卓巳の様子に、


「何か強烈なショックを受けたようだね。うつ状態らしい。誰かそばについているほうがいいんだが」

「それは……ひとりにすると危険ということですか?」


宗はずばりと尋ねてみる。

すると安西は、「どうだろうな。自殺までは心配しなくてもいいと思うが」つけ足された言葉に、周囲はどよめいた。


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