愛を教えて
卓巳の瞳に独占欲や嫉妬心が浮かび上がり、太一郎はそれを見逃さなかった。


「彼女を俺のモノにする。婆さんに……皐月様に土下座してでも、この家に置いてもらう」


太一郎の言葉は真実味が溢れていた。

本気で言っているのだから当然だ。
しかし、肝心の卓巳はその言葉に発奮せず、太一郎の本気に臆してしまう。


「そう……だな。万里子が望むなら、幸せにしてやってくれ。私はこの家を出るから」

「貴様、本気で言ってんのか?」


情けない言葉を吐く卓巳に、太一郎は我慢できずに殴りかかった。


彼らの背後から悲鳴が上がる。

だが、太一郎に殴られても卓巳は全くの無抵抗だ。
殴ったら殴り返してくると思っていた太一郎は、これ以上どうすればいいのかわからず、思わず後ろを振り返る。

雪音と千代子が人垣の最前列にいて、“もっとやれ”のジェスチャーをして見せた。


(もっと、かよ。……ったく、埒が明かねぇ。他にこいつを動かすには)


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