愛を教えて
「すべてを承知の上で万里子様を愛されるのは、卓巳様だけではない、と言うことですね。この家の当主も、藤原の社長も……まあ、努力が一瞬で吹き飛ぶことなんて、人生にはよくあることですから」


雪音の皮肉に卓巳は自嘲めいた笑みを浮かべる。


「君は聡明な女性だ。僕がここを出ても、万里子が太一郎を選んだときは、そばにいてやって……」

「それは大きなお世話です!」


雪音は手を止め、卓巳を振り返る。

そして、ハッキリとした声で彼の言葉を一刀両断にした。


「連れて行って欲しいと泣いて縋る女性を、捨てたのは卓巳様ご自身じゃありませんか? 運命の悪戯や他人の悪意で失ったものは、取り戻すことができると私は信じています。でも、自ら捨てたものは二度とその手には戻りません。人生には抗えない運命があることは知っています。けれど、運命に従うのは義務じゃありません!」


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