愛を教えて
挙式前、卓巳と一緒にオーナーズ・スイートに宿泊したが、このグリーンパーク・スイートはあの部屋よりも遥かに広かった。

万里子はひとりで何をしたらいいのかわからない。


ホテル側は気を利かせてくれて、随所にハネムーン用の飾りつけを施してくれていた。

シッティングルームのセンターテーブルの上には、淡いピンクの薔薇の花かごが置かれ、カードには「Happy ever after(いつまでもお幸せに)」の文字が。

更に、ベッドの上には赤い薔薇の花びらが散らされ、洗面台に置かれた石鹸はハートの形をしていた。


深夜になっても戻らない卓巳を思い、それらを目にするだけで、万里子の中の切なさが増していく。



機内でも、卓巳は仕事ばかりしていた。機内食にも手をつけず、空港でもコーヒー以外は口にした様子もない。


食事はちゃんと取っているのか? 昨夜は眠れたのだろうか?


聞きたいことは山ほどあるのに、結局、何ひとつ尋ねることはできなかった。

だが、そういう万里子にしても変わりはない。

一昨日から、ほとんど何も食べておらず、眠ってもいなかったのである。


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