愛を教えて

(2)魔女の最後

そのころ、東京ではひとつの計画が進められていた。


(――元日は晴れそうだな)


離れの二階から、宗は窓ガラス越しに星空を見上げる。大晦日の深夜、彼はその場所でひとりの女性を待っていた。

もうすぐ日本時間ではカウントダウンだ。ロンドンではまだ昼の三時といった辺りか。ニューイヤーパーティさえ乗り切れば、あとは正式契約を残すのみである。

ロンドンのフジワラ本社から定期連絡は入るが、卓巳からはなんの連絡もない。


雪音の言葉を信用して、卓巳と万里子だけで送り出したが、本当によかったのだろうか? やはり、自分も同行するべきだったかもしれない。

宗がそんなことを考えたとき、二階に上がってくる足音が聞こえた。



卓巳と万里子が不在なこともあって、藤原邸では年末年始、パーティの予定はない。住み込みの従業員も、半数が帰省している。

母屋も離れもすべてがシンと静まり返り、新しい年が来るのを静かに待っていた。


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