愛を教えて
だが、あまり“静かに”で待っていられないのが宗である。

彼がじっと見つめていると、ノックもなしにドアはすうっと開いた。入ってきたシルエットは明らかに女性。暗い室内で待っていたので、彼の目はだいぶ闇に慣れてきている。

その人影が蛍光灯のスイッチに手を伸ばしたのが見え、彼は声をかけた。


「電気は消したままのほうがいい。離れに灯りが見えれば、仕事熱心な執事殿が不審がる」

「でも……この明るさで見えるの?」


ジャッ――宗は窓のカーテンを閉じた。

そして、ベッドサイドの灯りを点ける。この程度の光であれば、遮光カーテンを引いていれば外には漏れないだろう。


「さあ、コレでOKだ。ベッドまで来いよ。隣が空いてる」


宗はベッドに腰かけ、欲望を絡ませた声で女を誘った。同じことを卓巳がするには、あと十年修行がいるだろう。


「あら? 本気だったの? あなたはカカシがタイプなんだと思ってたわ」


オレンジ色の灯りに照らされたのは、藤原家のメイド永瀬あずさだった。


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