愛を教えて
今から十二時間前、宗は母屋の裏手で私服のあずさを捕まえ、問い質した。 


「君だろう? 例の怪文書を送った犯人は」

「なんのことかしら? 証拠を見せてよ」


あずさは自信満々だ。いつか聞かれるとわかっていたらしい。

だが、そんな彼女に答えず、宗は思わせぶりに笑う。


「言っておくけど、太一郎と絡んでる裸の女があたしだとしても、それで犯人とは限らないわ。太一郎自身かもしれないし、あいつが写真のデータを流出したのかも。それか、あたしを嫌う誰かが罠に嵌めたのかもね。そう思わない?」


わざと顎を突き上げ、あずさは自慢の胸を張る。そして、微妙な視線を送る宗を、怪訝そうに見返した。


「このことは、社長には報告してない」

「それってどういう意味?」

「俺は個人秘書なんだ。社長が失脚すれば、即行でクビだ」

「だったらなんなの?」

「太一郎と尚子親子を押さえれば、クビは繋がる」


宗は肩を竦め、しらっとした顔で言った。


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