愛を教えて
(……万里子が欲しい。彼女を抱きたい)


卓巳は胸の奥で猛り狂うその思いから、目を逸らしたかった。

そこにつけ込んだのが英国人モデル、ジューディス・モーガンだ。


欲望を代替品で補おうと愚行に走った卓巳に、罰はすぐさま下された。


ジューディスのキスに応えようと思った。

だが、愛しさも何も感じない。それどころか、嫌悪感に耐えるのが精一杯だ。それはかつて、セックスに関わる行為すべてに感じていたことだった。


万里子が飛び出して行ったのは覚えている。

あの様子なら隣の部屋ではなく、外に出たはずだ。普通なら心配で万里子を追うだろう。


だがこのとき、卓巳の疲労は限界を超え、正常な判断力を失っていた。


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