愛を教えて
卓巳はジューディスを引き剥がし、『飲みなおそう』と提案する。

単なる時間稼ぎだ。この部屋に来た彼女の目的はひとつだろう。卓巳の小手先のごまかしが通用する相手ではなかった。

ジューディスはアルコールを手に卓巳の膝に乗りキスを続けようとする。

それは多くの男が喜ぶ、艶めかしい、興奮を煽るようなキス。しかし、卓巳にとっては拷問にも等しいキスだった。


卓巳の身体は明らかに警告を発している。なのに、引くことができない。

仕事においてはそれが長所となり、集中力の高さや熱心さにおいて尊敬され、成功を収めてきた。ところが、恋愛やセックスにおいては逆だった。

十年前は何もできないまま撤退を余儀なくされた。だが、今回は少なくとも万里子との経験がある。卓巳はその勢いを借りて、ジューディスの服に手をかけた。


しかし、彼女は万里子とは違った。

万里子はすべて卓巳の主導で、彼が与えるまでじっと待っていてくれる。どれほどたどたどしい愛撫であれ、万里子は目を潤ませ、喜んでくれた。

そんな夫婦の間のルールが、ジューディスに適用される訳がない。


彼女は率先して卓巳の身体に触れ、洋服や下着を脱がせ始める。彼女の指先は恐ろしく官能的な動きをした。石像すら熱く高ぶらせるだろう。

だが、卓巳はジューディスの愛撫に、自分がどれほどセックスを嫌悪し、女の身体を忌み嫌っていたか思い出してしまった。


そして、ジューディスがトップスを脱ぎ捨て、露わになったバストを卓巳の顔に押しつけた瞬間――。


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