愛を教えて
何度も何度もふたりは唇を重ね合う。

万里子も卓巳の唇からジューディスとのキスを消し去ろうと懸命に応えた。


卓巳のはだけた胸に万里子の手が置かれた。

その部分から全身に炎が燃え広がる。ジューディスと何が違うのか、どんな差があるのか、卓巳にも全くわからない。肌が万里子の指を覚えている。いや、万里子の指だと思うから、全身が悦びに震えるのかもしれない。

万里子の手が背中に回り、卓巳を抱き締めた。

卓巳も折れそうな腰に手を添え、抱え込み、そのまま大理石の床に押し倒しそうになる。


「待ってくれ、万里子。先にシャワーを浴びてくる。あの女の匂いを消してくるから……」

「いやっ! 行かないで。離れないで。お願い、そばにいて。あの人の香りなら私が消して上げる」


そんなふうに万里子に言われたのは初めてだ。


卓巳は驚きと共に、血が沸騰するような感覚に襲われる。

だが、このまま大理石の上で万里子を裸にはできない。卓巳は立ち上がると同時に彼女を抱き上げた。


ついさっきまで、自分の身体を支えることすらできなかった。

それが、卓巳は自分のどこにそんな力が残っていたのか、不思議でならない。


大股でウォッシュルームを横切り、ベッドルーム直通のドアを卓巳は肩で押し開けた。


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