愛を教えて
「万里子、本当に僕の言うとおりにしてくれるのか?」


万里子の唇は卓巳の首筋にピッタリとつけられている。小さなイエスの返事は甘い吐息となり、卓巳の肌から体内に伝わった。

そのままベッドに飛び込みたい誘惑を抑え、卓巳は万里子を床に下ろした。

彼女の足元に靴はなく、ストッキングだけになっていた。途中で脱げたのだろう。振り向くと、ベッドルームの床に転がっている。


「服を脱いでくれ、自分で……下着もストッキングも……全部だ」


卓巳の声は上ずっていた。

自分で脱がせたい。だが、打ち砕かれた自信を取り戻すには時間がなさ過ぎる。


そんな卓巳の心中を察したのか、万里子は立ち上がり、コートから順に脱いで行った。キャミソールとストッキングを脱ぐと、あとは真っ白なレースの二枚だけになる。

ハーフカップのブラジャーは先端が見えるギリギリのデザインだ。形のよいバストを下からすくい上げ、目が眩むような谷間を作り上げていた。

下は、Tバックではないが、それに匹敵するほど布地が少ない。全体が薄いレースでできているのだろう。純白のせいか、常夜灯の弱い光にも、中心の色づいた部分が浮き上がり、卓巳の想像を掻き立てた。


やがて、純白のレースが足元から外れる。

万里子は生まれたままの姿で卓巳の前に立つ。

それはまるで、ボッティチェリの“ヴィーナスの誕生”を思わせる神々しい姿だった。


< 624 / 927 >

この作品をシェア

pagetop