愛を教えて
卓巳は万里子の身体から目が離せない。

同じ乳房であるはずなのに、彼女の胸に覚えるのは吐き気ではなく、愛しさと全身に漲る欲望だ。


だが、いつまでも万里子ひとりを裸にはしておけない。

卓巳もバスローブを肩から外した。ジューディスにボタンを外され、だらしなく着崩れているスラックスのファスナーも下ろす。

そして、そのまま一気に全部を脱ぎ捨てた。


卓巳の身体は興奮の極みだった。

しかし、下半身はその兆候を示してはいない。わかってはいても、卓巳は落胆の思いを隠せない。だがそれでも、万里子が欲しかった。


「万里子……ご覧のとおりだ。でも、愛している……おいで」

「卓巳さん!」



万里子は迷わず卓巳の胸に飛び込んだ。


新婚仕様にデコレーションされたベッドルームが、初めてその用途を果たしていた。適温に整えられたはずの室内は甘い吐息で満たされ、暖かさより暑さを覚えるほどだ。


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