愛を教えて
『サー・スティーブン。あなたが約束したのはこの私で、妻ではないはずだ。しかも、とうに時間は過ぎている』


卓巳の声はあからさまな怒りを滾らせていた。


ライカーは逆に、待ち侘びた友人に向けるような笑顔を見せ、立ち上がった。

卓巳に歩み寄り、肩を叩きながら手を差し出す。


『やあ、タクミ。君が来るのを待っていたよ。私は直接マリコにお願いすることにしたんだ。君に頼んでも少しも話が進まないのでね』


「万里子、今日は部屋から出るなと言ったはずだ。部屋に戻りなさい」


卓巳は恐ろしいほど高圧的な視線をライカーに向け、握手を無視した。

そして、ライカーと同時に立ち上がった万里子に、日本語で命令する。卓巳は怒りの波動を漂わせる以外は完全に無表情だ。その思惑を誰にも読ませない。


このとき、さすがにライカーから笑顔が消えた。

卓巳の無礼極まりない行為に、口を固く閉じ、鼻にしわを寄せて卓巳を睨んでいる。


「ごめんなさい。卓巳さん、私……」

『ほら、これだ! タクミは君の話も聞かない。自分の気持ちを押しつけるだけだ。マリコ、命令されるだけで君は幸せになれるのかい?』


ライカーの横やりに卓巳も黙ってはいない。


『それは私たち夫婦の問題です。あなたには無関係だ』「万里子、部屋に戻るんだ」


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