愛を教えて
翌日昼過ぎ、卓巳は部屋に戻って来た。


「……すまない。一緒にパーティに出席して欲しい」


卓巳は喘ぐように言うと、額を押さえ、ソファにドサッと座り込む。

疲労の色が濃い。おそらくここ十日ほど、食事も睡眠もまともに取っていないはずだ。


「卓巳さん、大丈夫ですか? 少しお休みになってください」


万里子はコンシェルジュに頼んで取り寄せてもらった日本茶を淹れながら、卓巳に声をかける。


だが、クローゼットの横にかけられた真紅のドレスが卓巳の視界に入った途端、立ち上がって叫んだ。


「これが奴からのプレゼントだと!? 奴は君を娼婦か何かと間違えてるんじゃないのかっ」

「やっぱり、これを着て出ないといけないんですね」


万里子のしんみりとした声に卓巳は数秒黙り込む。


「いや、いい。やっぱりやめだ。その必要はない! なんでそんなパーティに出なきゃならないんだ。どうして君をそんな」


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