愛を教えて

(11)リッチモンドの攻防

ロンドン中心部からヒースロー空港の方角に向かって約一時間、テムズ河畔に高級住宅地リッチモンドがある。

英国内に十個ある王立公園のうち二個がここにあり、商店街には一流ブランド店が立ち並ぶ。ロンドンからなら、日帰りで一日観光が楽しめる場所だ。

なかでも上流階級《アッパークラス》の住居が建ち並ぶエリアの一角に、ライカーが所有する邸があった。

卓巳の調べたところ、そこはライカーが女性との情事に利用する別邸らしい。

一時期、特定の女性を住まわせていたようだが、今は管理人だけだという。


今回のパーティはライカーが突然思い立ったものなので、身分の高い客は来ないとのことだった。


だが、卓巳と万里子がそこを訪れて、唖然とする。


貴族階級の者がいないというだけで、それは決して小規模とは言えないパーティだった。

非公式、しかもライカーの思いつきでこれだけの客が集まる。おそらく、それを万里子に見せつける意図もあるのだろう。



『やあ、マリコ、楽しんでるかい?』


ライカーはまるで悪びれない、屈託のない笑顔を見せながらふたりに近づいてくる。


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