愛を教えて
それだけじゃない。

時折見せる卓巳の激しさに、万里子は困惑していた。



万里子の視線が子供に向けられたとき、唐突に四年前のことを口にする。


『なぜ結婚しなかったんだ? 十八なら可能だろう。それとも、公にできない相手ということか?』


突然、思い出したように万里子を糾弾する。

高校生で結婚など考えられなかった、万里子がそう告げると、


『ならセックスも考えるな』


低い声で吐き捨てるように言うのだ。


それでいて、万里子の表情が曇ると、慌てて『すまなかった』と謝罪する。

卓巳自身、自分を持て余しているようだ。そんな彼の言動に、万里子は振り回されながらも、目が離せなくなっていて……。



――バタンッ!


ふいに大きな音が聞こえた。


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