愛を教えて
ライカーにとって、これほどまでの拒否は初めてだ。

今まで関係した女性はすべて、ベッドの上では彼に降参して来た。彼を嫌う妻すら、会うと必ず夫を求める。それどころか、『スティーブンこそ愛人にふさわしい男よ。一度試してみたら?』そんな言葉で夫を女友だちに勧めるくらいだ。

苦々しく思う反面、上流階級の結婚にはこのくらいがちょうどいい、と納得して来た。


だが、万里子と出会ってしまった。

始めは単なるゲーム。どれほど仲のよい新婚夫婦でも、夫を凌ぐ男が現れたら妻はそちらに転ぶ。それを証明しようとしただけだ。ふたりをほんの少し苛めて、契約書を交わしておしまいにするつもりだった。

それが、気がつけばライカーは万里子に夢中になっていた。

その結果、卓巳を本気で怒らせた。このまま行くと公益事業に関わる権利をすべて取り上げられてしまう。破綻とまではいかないが、ライカーは多くのものを失うことになる。

卓巳に降参して手を引くのが最良の手段だ。

だがそれは、頑なで愚かな愛を、本物の愛と認めることになる。

ライカーはふたりの愛に負けたくなかった。


『ああ、わかった。では私もそのつもりでやろう。君は早く抱いて早く捨ててくれと言ったね。いいだろう、君は私が金で買った娼婦だ。諦めて、私に身体を許したまえ!』


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