愛を教えて
どれほどの時間が過ぎたのだろう。

気がつくと万里子は広いベッドの上でひとり寝転がっていた。


万里子の目に見覚えのないシャンデリアが映る。それは、ルイ王朝風の豪奢なリッツの物とは違う、幾分年代も新しい、すっきりとしたアール・デコ調のインテリア。

天井も壁も灰色に見える。カーテンは開いているが光は射し込んでこない。そう言えば今日は曇り空だった。万里子はボンヤリとした頭で、そんなことを考えていた。


何が起こったのだろう……何があったのかまるで思い出せない。


そして、そうっと身体を起こし、驚愕の事実を知る。彼女は、一糸纏わぬ姿で、ベッドの中央に横たわっていたのだ。

しかも、なぜそうなったのか、何も覚えていない。


(……サーは私を?)


室内は静寂のひと言に尽きる。

ライカーの姿は見えず、その名残すら感じられない。万里子は手近にある毛布で身体を包み込んだ。

四年前は酷い痛みを覚えた。だが今は、身体のどこにも痛みは感じない。だが、あのときとは事情が違う。


< 731 / 927 >

この作品をシェア

pagetop