愛を教えて
その直後、寝室のドアが思い切り開かれた。


「きゃ!」

『信じられない……。君はまだ、そんな格好でいたのか?』


その声はライカーだ。 

万里子は裸の上にシルクのバスローブ一枚しか羽織っていない。両腕で上半身を抱き締めるようにして屈み込む。


「近づかないで……私に触らないで」

『さあマリコ、タクミが来ている。君の夫だった男だ。挨拶くらいしたまえ』


ライカーの声に優しさは微塵もない。彼はずかずかと押し入り、万里子の腕を掴んだ。


「い、や……やめて……お願い。卓巳さんには会えません。お願い、許して」


立ち上がろうとしない万里子に、ライカーは舌打ちして言った。


『さっさと来るんだ。さもなければ君が……私のものになったこの部屋に、タクミを呼ぶぞ!』


ライカーの言葉に万里子は背筋が凍りつく。


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