愛を教えて
『嫌なら構わない。私の愛人になりたい、とやって来たのはマリコだ。このまま娼婦のように扱ってもいいんだよ』


ふたりの愛を踏み躙る心地よさに、ライカーはほくそ笑む。


「卓巳さん……ごめんなさい。もう、私のことは……このまま」

「万里子、本当にすまない。全部、僕のせいだ」


顔を上げた万里子はこの部屋に入って初めて卓巳を見た。ふたりは日本語で語りかけ、互いの瞳を見つめ合う。

卓巳の姿を瞳に映した瞬間、万里子は瞳から滝のように涙が流れ落ちた。ライカーが強引に止めた万里子の時間が、再び動き出したかのように。


そんな万里子の様子にライカーは悔しさを隠せない。


『私が警察を呼んだらタクミは連行されるだろう。そして、マリコは私のベッドに戻る。さあ、どうするんだ?』


まるで癇癪を起こしたように叫ぶライカーを前にして、卓巳は床に膝をついた。両膝は揃えず開き気味で、そのまま腰を下ろす。そして床に手をつき、卓巳は頭を下げた。


『このとおり、非礼の段はお詫びします。どうか、妻を返してください』


それは、どう見てもライカーの完全勝利だった。


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