愛を教えて
宗は咳払いをしつつ、
「申し訳ありません、社長。静香様と万里子様がこの部屋で鉢合わせされまして」
「ねえちょっと待って。藤原って……まさか、卓巳さんのことなの? 太一郎じゃなくて? 嘘でしょ」
静香はようやく、宗の「イトコ違い」という意味に気づいたらしい。すると、噛み付かんばかりの形相で万里子を睨んだ。
万里子は卓巳から、父親に異母妹がいることは聞いていた。だが、イトコの話など聞いたことがなく、太一郎という名前を聞いてもよくわからない。
「あの……藤原さん。お聞きしたいことがあります」
「なんでも答えますよ。だが、万里子さん、そろそろ予約の時間だ。話は食事のときにでも。では、行きましょう」
卓巳は静香の目があるせいだろうか、万里子に対して親しげに振る舞った。
そして、これまでで一番優しい笑顔を万里子に向ける。
「静香、彼女のことは私からおばあ様に話すつもりだ。それまで誰にも言うな。……いや、言わないでくれ。――宗、あとは頼むぞ」
「はい。お疲れ様でした」
かしこまって頭を下げる宗と、呆気に取られて言葉もない静香を残し、万里子は卓巳と一緒にガーデンスイートをあとにした。
「申し訳ありません、社長。静香様と万里子様がこの部屋で鉢合わせされまして」
「ねえちょっと待って。藤原って……まさか、卓巳さんのことなの? 太一郎じゃなくて? 嘘でしょ」
静香はようやく、宗の「イトコ違い」という意味に気づいたらしい。すると、噛み付かんばかりの形相で万里子を睨んだ。
万里子は卓巳から、父親に異母妹がいることは聞いていた。だが、イトコの話など聞いたことがなく、太一郎という名前を聞いてもよくわからない。
「あの……藤原さん。お聞きしたいことがあります」
「なんでも答えますよ。だが、万里子さん、そろそろ予約の時間だ。話は食事のときにでも。では、行きましょう」
卓巳は静香の目があるせいだろうか、万里子に対して親しげに振る舞った。
そして、これまでで一番優しい笑顔を万里子に向ける。
「静香、彼女のことは私からおばあ様に話すつもりだ。それまで誰にも言うな。……いや、言わないでくれ。――宗、あとは頼むぞ」
「はい。お疲れ様でした」
かしこまって頭を下げる宗と、呆気に取られて言葉もない静香を残し、万里子は卓巳と一緒にガーデンスイートをあとにした。