愛を教えて

(8)ラブ・ストーム

「あの……卓巳さん……あの」


ライカーのことを考え始めたら、万里子は再び心に鍵をかけるかもしれない。

矢も盾もたまらず、卓巳は万里子に口づけた。


ふたりの唇が触れ、啄ばむようなキスを繰り返す。強く押し当て、官能の実を根こそぎ奪いそうになるのを卓巳は必死で我慢した。


「卓巳……さ」

「シッ、黙って。僕のことだけを考えてくれ」


万里子は卓巳に抱きつくでもなく、所在なげに手を広げたままだ。卓巳はそんな万里子の指にそっと触れた。互いの手の平が重なり、それだけで、たとえようのない悦びがふたりの間を行きかった。

ゆっくりと、絡め合う指がふたりの隙間を埋めて行く。

バスルームに駆け込もうとする万里子を引き止めるべく、ふたりはベッドの横に立っていた。

キスしながら、卓巳はじりじりと万里子をベッドに押し戻す。


「きゃっ」


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