愛を教えて
もう少し冗談めかして尋ねるつもりだった。だが、本当にそうだったら、と思い始めると、万里子はどんどん思いつめた声になってしまう。

そんな万里子の頭の下に、卓巳はグイと腕を押し込んだ。そのまま軽く抱き寄せ、とんでもないことを口にする。


「えっと……仕方ないな。じゃ、僕の初めての女性の話をしようか」


突然の告白に万里子は息が止まる。


「最初はとにかく焦ってた。色々悪戯めいたことはしてたんだが、彼女も初めてだったからね。いきなり僕が押し入ってしまって……」


卓巳は軽い口調で語り続ける。


「ああ、でも……途中までで、あっという間にギブアップだったな」

「どうして? どうしてそんな方がいらっしゃるなら、その方と結婚されなかったんですかっ? それを、そんな軽い言葉で」


万里子は卓巳の腕を振りほどき、本心から批難しようとした。

ところが、


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