愛を教えて
四年前、手術を受けた病院はともかく、忍の勧めで受診したいくつかの産婦人科は万里子に冷たかった。被害者であることを伏せて受診したのだから、仕方がなかったのかもしれない。
医者は皆、卓巳が最初のころ口にした「女子高生が奔放に遊んだ挙げ句、妊娠して中絶」といった視線を万里子に向けた。数人のドクターからは、避妊の必要性を懇々と諭され、中には、後遺症は自業自得と言われたこともあった。
万里子が、自分には泣いて悲しむ資格すらない、と思い始め“贖罪”に心が傾くのも当然だった。
万里子がそんな経緯を告げると、卓巳は拳を握り締め叫んだ。
「その間抜けな医者の名前を言ってみろ。全員からドクターの肩書きを奪ってやる!」
「やめて、卓巳さん。そんなつもりはないの。それに、もう“過去”よ。そうでしょう?」
怒った卓巳は本当にやりかねない。万里子は慌てて言葉を続けた。
「あ、あのね。たとえ名前だけでも、愛し合って授かった命だと言って上げたくて『愛が実る』と書いて『まなみ』と名づけたの」
万里子の言葉を受け、卓巳は怒りが収まったのか、今度は信じられないことを言い始めた。
医者は皆、卓巳が最初のころ口にした「女子高生が奔放に遊んだ挙げ句、妊娠して中絶」といった視線を万里子に向けた。数人のドクターからは、避妊の必要性を懇々と諭され、中には、後遺症は自業自得と言われたこともあった。
万里子が、自分には泣いて悲しむ資格すらない、と思い始め“贖罪”に心が傾くのも当然だった。
万里子がそんな経緯を告げると、卓巳は拳を握り締め叫んだ。
「その間抜けな医者の名前を言ってみろ。全員からドクターの肩書きを奪ってやる!」
「やめて、卓巳さん。そんなつもりはないの。それに、もう“過去”よ。そうでしょう?」
怒った卓巳は本当にやりかねない。万里子は慌てて言葉を続けた。
「あ、あのね。たとえ名前だけでも、愛し合って授かった命だと言って上げたくて『愛が実る』と書いて『まなみ』と名づけたの」
万里子の言葉を受け、卓巳は怒りが収まったのか、今度は信じられないことを言い始めた。