愛を教えて
「太一郎様、よくない情報です」


そう言ってファイルを手に現れたのは卓巳の秘書、宗行臣。


「こないだから、よい情報って聞いたことないぜ」

「そう言わないでください。フジワラ・ロンドン本社で何かごたごたが起きているようです」

「それって卓巳絡みか?」

「おそらくは。社長からの連絡は、レセプション終了の報告を最後に途絶えています」


契約完了の連絡もなく、万里子との仲がどうなっているのかもわからない。

宗の調査では、卓巳が極秘で動いているらしく、ロンドン本社の社員たちも固く口を閉じたままだ。

リッツ・ロンドンの支配人も同様。どれほど事情を説明しても、一切部屋に電話を繋いでもらえない。

ふたりは顔を見合わせ、深いため息を吐いた。


「本当によかったんだろうな? 夫婦仲も契約もぶっ壊れて、卓巳は行方不明なんてことは……ないよな?」


太一郎の声はおっかなビックリだ。


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