愛を教えて
やっぱり無理だ、できない、自分がやらずとも卓巳が戻って来てどうにかするだろう。

そして、太一郎の心が回れ右をした瞬間、たった今入って来たドアが大きな音を立てて閉じられた。


「どうぞ、太一郎様。おかけください」


ドアを閉め、にっこり笑ったのは宗だった。



「――――以上が緊急招集のあらましです。すべて、藤原尚子様からのお申し出となります。今回の一件に関しまして、会長の藤原皐月様から委任状を預かっております」


宗は内ポケットから会議机の上にスッと置いた。一通の白い封筒で、中に委任状が入っていることがわかる。


「会長は、藤原太一郎氏に本日の取締役会における決定権を委任されました。尚、ロンドンのフジワラ本社から、ライカー社との契約締結の報告はありません。藤原卓巳社長とは連絡が取れておらず、今回の取締役会の決定につきましては、承認なさらない可能性もあることをご承知おきください。――以上です」


宗が全員の前で話し終えると、すぐに尚子が言った。


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