愛を教えて
「本人が辞めたいと言ったのよ! あたくしはちゃんと聞きましたわ。宗さん、あなたも聞いたでしょう? この太一郎に任せる、と。それをあとになって承認しないなんて」


興奮する尚子の横で、敦が「やめないか」と小声で制する。

太一郎は会長の代理ということで一同の上座に座り、そんな両親の姿を見ていた。


「――太一郎様」


背後に立つ宗が、太一郎の背中を突いた。早く口を開けとジェスチャーで示す。太一郎は息を吐き、少し吸って止めると、立ち上がった。


「俺は……」


足を後ろからコンと蹴られ……宗が首を横に振る。


「わ、私は……今回の件について、会長より一任されてきま……参りました」


どうにか話し始めると、宗は二歩ほど後ろに下がった。


「その……皆さんが社長解任について話し合われる前に、聞いていただきたいことがあります」


その言葉に全員顔を上げる。


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